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GREENa LAB

「自然エネルギー」をめぐる、ヒト・モノ・コトの実験室

ReBuilding Center JAPAN 東野唯史氏

2020.12.25 公開

後ろめたいことは少なく、
次の世代へ繋いでいくために。
株式会社 ReBuilding Center JAPAN
代表取締役 東野唯史氏インタビュー(2/2)

目をギラギラさせて環境活動をするのではなくて、楽しんでる姿がいいはず
気軽に古材を使って欲しいという思いからなのですね。建築がご専門かと思うのですが、理念に掲げている「REBUILD NEW CULTURE」というスローガンでは“文化”という言葉が入っていますね。これはどうやって決まったのでしょうか?
東野
最初はなんか深い意味を考えずに乗り出したんですね。「リビセン始めます」と決めた時に何人かの先輩たちに連絡して。その1人にものすごく日本人離れした感覚を持っている先輩がいて、連絡した際の返信の最後に「Let’s Rebuild Japanese Future, together!」みたいな感じの言葉が書いてあって。
Rebuildって「リビルディングセンタージャパン」って言うときくらいしか使っていなかったけれど、案外そういう使い方もあるなぁって。それで、この事務所を借りるためにプレゼンするための企画書にコンセプトが欲しいから適当に「Rebuild New Culture」って書いて。

でもこのフレーズを、案外みんなが受け入れてくれていて。後からそれに続く日本語の理念ができています。それが「次の世代に繋いでいきたいものと文化を救い上げ、再構築し、楽しくたくましく生きていけるこれからの景色をデザインしていきます」という長い文章のものです。
この中で大事なのが「楽しくたくましく生きていく」という部分だと思っています。当然、ラクはできないからある程度たくましさが必要なんだけど、目をギラギラさせて環境活動をするのではなくて、楽しんでる姿がいいはずだから、そこに賛同者が集まってくるはずだろう、と。「楽しくたくましく」というのを広めていこうって思っています。
ReBuilding Center JAPAN 東野唯史氏

次の世代に繋いでいきたいって言ってるのも僕らがゼロから作るわけじゃないっていうことでして。もともと昔からあった文化とか考え方があるし、古材を使って家を建てるのだって昔の人ほどやっている、って話なんです。やっぱり古材はリユースされ続けていて、古い住宅に行くと裏側で古材がよく使われているんですよ。屋根裏とか、床下とか。古いものを大事にしていこう、つないでいくみたいなのは昔から変わらない。だからNew Cultureという表現なんです。
昔の文化もありつつ今の時代に合わせて。現代の技術もあるから、アレンジして表現していくみたいなことが今の僕らにできることだと思うので。

そういったことを考えながらやっているので、「古民家、最高!」という訳でもないし、エコハウスを手掛けた時も、断熱改修などもやっています。寒くて暑いリノベーションは終わりで、これからはちゃんと快適に新築以上に快適なリノベーションの在り方、を追求できますね。でもそれは昔はできなかったんです、技術的に。今は僕らより前の人たちが知識を積み上げてきたからこそ、それを勉強するだけで実現できるものになっていて。「今使えるいいものは、使おう」と思っています。iPhoneも使うしMacも使うしクラウドサービスも使うし。いいものは活用しつつ、昔のことも大事にしたいよね、というのがこの言葉に込められています。
なるほど。それと古材を回収するなかで、持ち主の方の思いを伝達する、という点も大切にされているとお聞きしましたが、具体的にはどんなことなのでしょう?
東野
そうですね。今使っているこの机にも「ストーリー」という札を立てています。どんな古材をどんな思いで使ったのか、という説明書きですね。あとうちで販売している古材は8~9割くらいレスキューナンバーというものが入っています。
そしてナンバーをもとに、古材の生い立ちが記録されたカルテがあって、それを開けば番地まで分かります。またレスキュー担当者が家主さんと話をした中で印象的だった言葉やエピソードなどが書いてあります。
例えば来店したお客さんが食器1枚を持ってきて、「これってどういうお宅で使われていたんですか?」って聞かれても答えられるといった仕組みにしています。でも全員が必要な情報ではないので、必要な人にはお伝えしますし、ある程度ピックアップしてそのレスキューカルテを閲覧できるファイルを別に作って売り場に置いていたりするんです。

それは、僕らが解体屋さんが持ってきたものを扱ってるんじゃなくて、自分たちで家主さんとある程度やりとりして、レスキューに伺っているからできることです。それを伝えることで家主さんの思いもレスキューできる。そういうのを大事にしていますね。
ReBuilding Center JAPAN 窓枠

それで最近うちのスタッフが始めたのは「レスキューレター」というものです。思い入れの強い家主さんと会った時に、家主さんにある特定の家財や古材をいくつかピックアップしてもらって、そのエピソードを直筆で書いてもらうんですね。
その家主さんのお手紙付きで古材を販売して、その後、購入した方にお礼のお手紙書いてもらってそれを家主さんに返す、みたいなことをやっています。これは両方喜ぶなぁと。
人と人とつながる、ということですね。今まで顔の見える野菜みたいなものはありましたが、家財では無いですよね。素晴らしいと思います。
“正当性”がうたえるような企業作り
そういえば最近、自家消費の太陽光も導入されたようですね。電気の切り替えもそうですが、自然エネルギーに興味を持ったのはどういったきっかけだったのでしょう?
東野
リビセン始める時からそこは気にはしていました。2016年に(事業を)始めて、その時ちょうど電力自由化が始まったと思うんですけど、当時は情報がめっちゃなくていろいろ調べました。結果として、事務所立ち上げの際に初めて新電力に切り替えて、さらにそのあと太陽光導入の検討と共にスイッチングを行い、グリーナでんきの契約をしました。

電力以外の観点で言うと、うちバイオマスでペチカストーブを入れていたこともあるので、当時から木材をゴミとして捨てるんじゃなくて、薪として熱エネルギーとして使い切るほうがいいだろうと思っていて。薪として使い切るんだったら蓄熱性能があるほうがオペレーション的にも楽だし、熱もムダにしないからこれにしようというのを決めて。
エネルギーの有効活用、といったことには関心があったのですね?
東野
リビセン自体がやっぱそういう環境のことを憂いて始まった事業みたいな感じなので、そこは切っても切り離せなくて、リビセンを営んでいく上で、なるべく後ろめたいことが少ないほうがいいなぁと思っているので。カフェでガスを使ってしまっているのだけど、ガスは化石燃料だからCO2出しているよな、とか。そのあたりの気になっている点を1つひとつ知識量と経済力で解決できる手順でやっつけていっている、みたいな感じです。
ReBuilding Center JAPAN 太陽光パネル

後ろめたいことは少なくしたい、という思いで自然エネルギーの活用を検討しているのですね。自然エネルギーの導入はどんな意味を持つのでしょうか?
東野
事業を行う上で、できることをやってない、ということが無いようにと思っています。特に取り組み内容が理念とずれている場合は、自分たちが取り組んでいることが薄っぺらになっていくんですよね。そこが結構もったいないなぁ、というのがあって。
例えば今うちの会社の車は、軽トラかキャラバンを使っていてガソリンと軽油を使っていますが、この分野は電気自動車が発達してないから選択肢がまだ無い。
けれど電気はすぐに切り替えができるという感じですよね。知らないからできないのは仕方ないかもしれないけど、知ってるのだったらやっちゃえばという考えでして。

自分たちの事業でアップサイクルの取り組みを通じて古材を扱っている、ということの“正当性”がちゃんとうたえるような企業を作りをしていかなくてはいけないなと。そのために大事だと思っています。
その中でグリーナでんきを知って、RE100プランを選びました。RE100プランを選んだ理由としては、健全にやりたいという思いがあったためですね。
再開発エリアのCO2をゼロにしたい
そのような思いをお手伝いできること、とても嬉しく思っています。最後に東野さんがこれから挑戦したいことはどんなことでしょうか?
東野
いま1つ検討を進めているのが、あるエリアの再開発案です。
僕と近くの友人でエントリーして、来月に企画書を提出するのですが、色んな企業に声を掛けて複数社で合同エントリーをしました。
何をやるのかというと、そのエリアのCO2をゼロにしたいと思っていて。

そこに建つビルとかお店とか、展示会場とか、いろんな種類の店舗が出店するのですが、ZEHとかZEBがあるなかで、エリアでCO2ゼロというのはまだ無いと思っていて。ZEBよりやりやすいと僕は思っているんです。駐車場の屋根に太陽光載せるとか、建物以外のところでも創エネする場所を作れるなど、やりやすいはずです。

また断熱改修などもできるので、作るエネルギーが足りなかったら建物の性能を上げて使うエネルギーを減らしてあげればいいという話で。太陽熱温水器を載せたり、県産材のバイオマスボイラーを入れたり、いろんな要素の組み合わせでそこのCO2をゼロに持っていけないかということを今考えていて、やりたいなと思ってます。
エリアでCO2ゼロ、というアイデアは新しいですね。
東野
はい、それだけでも企業誘致にも繋がるし、その地域の価値が高まるかなと思っていて。それに挑戦できればと思っています。結局、2050年までに日本でやらなきゃいけないので。だったら再開発のエリアくらいできるっしょ、みたいな風に思っています。
これからの日本にとって、心強い限りです。本日は貴重なお話を本当にありがとうございました。
取材日:2020年12月
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■プロフィール
株式会社ReBuilding Center JAPAN
2016年9月、長野県諏訪市にて代表取締役の東野唯史氏によって創業。古材と古道具を販売する建築建材のリサイクルショップを運営している。古材は、家屋や工場の解体などに伴って不要になったものを自ら引き取る(レスキュー)ことで、環境問題の改善や愛されてきたものへの思いを継承する伝え手になることを使命としている。2019年にグッドデザイン賞ベスト100、2020年に中国で開催された国際デザイン賞「DIA」TOP100を受賞、造作物だけでなくそのビジネスモデルにも多くの注目が集まっている。
ReBuilding Center JAPAN