2020.12.25 公開
後ろめたいことは少なく、
次の世代へ繋いでいくために。
株式会社 ReBuilding Center JAPAN
代表取締役 東野唯史氏インタビュー(1/2)
- リユースともリサイクルとも違う「アップサイクル」という言葉を知っていますか?
もともとの形状や特徴などを活かしつつ、古くなったものを捨てずに新しいアイデアを加えることで別のものに生まれ変わらせることです。古材のアップサイクルを通して新しい価値を提供しつづける、そんな現場へインタビューに伺いました。 - ストーリーを持っているというのが古材の良さ
- リビルディングセンタージャパンでは建築建材のリサイクルの事業を行っていますが、どんなきっかけだったのでしょうか?
- 東野氏
- もともとリビセンをやる前に「medicala(メヂカラ)」という屋号で全国点々とリノベーションの仕事をしていてその時に、各地域、大分県とか色々なところで、住み込みで作業しているなかで周辺に空き家が多くて、しかも住んでいた数カ月のうちにどんどん壊されて行っているようなものを実際に見てきました。調べると日本の空き家率とか、人口減少などの社会現象がありました。
その一方で当時2014、2015年ころは、インダストリアルデザインが流行っていてアメリカの古材とかが日本にたくさん輸入されてきている時期でした。日本でこれだけ古材が捨てられているのに、アメリカからの輸送コストやそれに使うエネルギーの話とか、日本のお金が外に出ていくことなど、あまり健全じゃないなと思っていて。じゃあこの捨ててしまう資源をちゃんと使えるような事業がやりたいなと思って始めたという感じです。僕は実際、古材をよく使っていて空間を作っていたので。
- 元々建築を学ばれていらっしゃって、その中で建材の商流に関してなど問題意識を持たれていたということですね?
- 東野氏
- そうですね、なんか普通の人が行きたくなる古材屋さんが日本に無いなと思っていて。敷居が高いし、立地も悪い場所が多いですね。
- 古材屋さんはどういう所にあるのですか?
- 東野氏
- 山奥です。田舎に多いですね。やっぱり広い面積が必要なので。土地が安いところで。だいたい業者を相手にしているところが多いので、公共交通機関も関係なかったりとかしていて。
- それで新婚旅行でアメリカ・オレゴン州のポートランドに行かれて本場の「リビルディングセンター」をご覧になったのですね。それは偶然なのでしょうか?
- 東野氏
- ポートランドに行くのは最初に決まっていました。その時「Casa BRUTUS」や「TRUE PORTLAND」という本が出ていて、情報を手に入れやすくなっていたのですがそのいずれにも「リビルディングセンター」というものが紹介されていて。行くんだったらアンティークショップ好きだから、行きたいなぁくらいに思って行ったという感じです。
- そしてそこで衝撃を受け、アメリカから名前やロゴを正式に引き継ぎ、2016年9月にリビルディングセンタージャパンを立ち上げたわけですね。アンティークが好きなことがきっかけだったということですが、そもそもアンティークや古材のどんな点がお好きなのですか?
- 東野氏
- 学生のときから服もよく古着とか着ていたんですが、その理由として、みんなが知っているブランドだとどこのブランドだかすぐ分かってしまうじゃないですか。そういう身バレしちゃう恥ずかしさ、みたいなのがあるなかで、古いのを使うとそういうのが無いんです。どこで手に入れたか、買ったか分からないし、その珍しさみたいなもの、被らない良さが学生のころから好きで。
古材や木材もやっぱりそうで、被らないということは唯一無二で。それぞれにストーリーがあるなぁということにちょっとずつ気付き始めて。例えばネットで買う古材と、誰々さんの家から剥がしてきた古材とであれば、後者のほうが使いたくなるな、というのがちょっとずつ見えてきて。ストーリーを持っているというのが古材とか古いものの良さじゃないかなと。
- ルミネ女子に買って欲しい
- レスキューと呼ばれる古材の回収活動ですが、回収してきた古材はどのように再利用できるようにするのでしょうか?
- 東野氏
- うちでは釘を抜いて、ホコリを落とした状態で売り場に出します。古材によるのですが、使いづらいものも出てくるんです。そういうものは、両端を落として平行にして、厚みを揃えて使い易くしたものなども売ったりして。DIYに取り入れやすいものと、古材に慣れている方向けのものと分けて売っています。
- 一輪挿しやお皿など、加工した商品もたくさん置いてありますが、それはどのように作られているのですか?
- 東野氏
- 一輪挿しなどは、オリジナルプロダクトみたいな形にしています。やはり日常生活の中に取り入れやすい古材を意識している点と、うちもちゃんと稼がないと継続的にレスキューを続けていけないので。そのための稼ぎ頭を作ろうということでオリジナルプロダクトを作り始めていて。あとは古材だけ見てもみんなイメージできないし、どう使おうみたいな状態になってしまいますよね。
- はい、私も正直それは感じました。
- 東野氏
- それが一輪挿しになったりとか、額になったりとか。古材活用のバリエーションとしての使用例みたいなつもりで作っていて。額もやっぱり1個1個表情が違っていて、皆さん慣れてくると自分で材料を買って額を作ってくれたりします。DIYができない人は買えばいいし、できる人は材料だけ買って自分で作ればいい、安上がりだから。私たちはそういう風な立場に居たいなと思っています。
- 敷居が高いのかなというところを、一般の人でも気軽に入っていける雰囲気とかお店作りというのを意識されているからこその発想なのですね。
- 東野氏
- そうなんですよね。ずっと冗談みたいにみんなでよく言っているのが「ルミネ女子に買って欲しい」という言葉で。例えばルミネが好きな、東京の賃貸マンションに住んでる女の子の家にあってもいいな、というものを作ろうか、ということなんです。最初に作ったテーブルは大きくて、ワイルドで、使う人を選ぶものなんですけど、最近作っているテーブルはコンパクトで丸みのあるものが多いです。でもそういう人たちのほうが一般的な意見だろうなと思って。
今までは古材の表情が好きな人が古材を使っていたのですが、僕がアメリカで見た景色は、古材をきれいにして使っている人がめちゃくちゃたくさん居て、古材の表情が好きだから使っているのではなくて、資源がリサイクルされるから好きなんだという思いが強いようで。アメリカの街並みを見ているとそれが分かってきました。DIYのレベルが全然高いですね、向こうの方々は。