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GREENa LAB

「自然エネルギー」をめぐる、ヒト・モノ・コトの実験室

加山興業株式会社代表取締役 加山順一郎氏

2017.6.21

エネルギーから、コーヒーまで。
ゴミから社会の「出口」を考える。
加山興業株式会社
代表取締役 加山順一郎氏  企画部部長 田畠真一氏インタビュー (3/3)

産業廃棄物ってなんだろう?
私たちの生活にどう関わっているのだろう?
「とっても頑固なゴミ屋さん」加山興業の取り組みから、
環境や社会について、いろんなことが見えてきました。
いろんな枝葉があっても、根っこのマインドが大事
なるほど、それでどんどん取り扱う事業が増えていくのですね。
加山
 だけど、一番大事なのは、この幹でも枝葉でもないのです。見えない部分、根っこの部分が腐ってしまってはどうにもならない。いくら大木であってもすぐに倒れてしまう。
 やっぱり『とっても頑固なゴミ屋さん』、それがマインドとして根っこの部分にあります。法律を順守する、リサイクルを徹底することは当たり前ですが、それ以上に、お客さまに喜んでいただけることが大切です。
 根っこさえしっかりしてれば、産業廃棄物の取扱品目も増やして幹が太くなって、大きな木を育てていくことができるのではないかと考えています。
   この根っこの部分を、全社員共通の認識、意識として持って、仕事に取り組んでいってもらいたいですね。
不足、不満…お客さまの「不」をなくしていきたい
加山
 今は『お客さまの不をなくす』っていう言葉を会社のキャッチフレーズにしています。「不」っていうのは、不足とか不満とか、気持ち悪いな、満足してないなっていうことを、廃棄物処理を通じて取り除いて差し上げる。それを一つのテーマとしています。
 ゴミについて困ったことや、省エネ機器、環境にやさしい新電力などトータルで相談されるような企業を目指しています。
先ほど、コンサルティングのようなこととおっしゃっていましたけど、困ったことを何でもお客さまに相談してもらうということですね。
加山
 ゴミ・廃棄物に関することから環境とかエネルギーに対することまで、「不」を取り除く。それによって、ものづくりの本業に専念していただければいいのかなと思います。
省エネ・節電のための並々ならぬ努力
加山興業さんは去年の11月にグリーナでんきと法人契約をされたそうですが、それはやっぱり環境への意識からですか?
加山
 そうですね。どうせ使うならきれいな電気のほうがいいですから。
とはいえ、今までももちろん節電や省エネなどにかなり尽力されていましたよね。どんなことをされていたのですか。
加山
 ピークカッターを入れていました。大きな動力を使うので、ちょっと負荷がかかると、ブレーカーからドンと落ちるような仕組みにしたりして。ピークをまずカットしちゃう手法ですね。
 あとは業務の平準化ですね。やっぱり動力って初期動作とか、機械を起動したりするときに負荷がかかるので、何とか止めないように平準化を目指しました。
弊社は大きな機械が十何個あって、同時に立ち上げるとより負荷がかかるので、バランス良く、段階式で稼働させたりしました。
なるほど!でも実際、負荷が大きいときにブレーカーが落ちる仕組みだったりすると、作業が中断しちゃったり、不便なことも多いですよね。
加山
 ええ。本来はそうあっちゃ駄目ですよね。仕事だから。本当はやるときには何も気にせずやりたいのですが。そういう意味では、社内の中での負荷を最小限に抑える工夫は確かに大事です。ただどこかで限界があるとも思います。
そういった工夫って、節電の他にも何かされていたのですか。
田畠
 ガソリンについても、エコ運転ということでドライブの講習会を実施しております。あとは設備関連を省エネ機器に更新したり、工場も水銀灯はLEDに変えました。
加山
 もちろん社員みんなの理解や協力が不可欠ですが、ISOも取得しているので何とかやってほしいと。使いづらい部分もあるだろうけど、やっぱり会社のルールとしてやってほしいとうことを話しました。
グリーナでんきに乗り換えて、意識も電気代も変わった
先ほどの話に戻りますと、そういった省エネへの工夫をされているなかで、グリーナでんきに変えたことによるメリットってありましたか?
田畠
 メリットはありました!切り変えて半年は経ちますが、意識も変わったことと、電気代も安くなりました。
 たとえば皆さん、食べものを選ぶときに、農薬漬けの野菜とオーガニックの野菜だったら、オーガニックの方を選びたくなりますよね。
それと同じで、私達の会社もお客様に選んで頂いています。私達が選ぶ立場になった時、環境の事や未来の事をしっかり考え、取り組んでいる会社を選びたい。その「想い」で電力会社さんも選びたい。そこでちょうど、グリーナさんとは環境や未来を大事にしたいといった事で意思疎通ができ、導入に至りました。
環境にやさしいグリーナでんきを選んでいることが、お客さまに選ばれる会社になるための付加価値になる、差別化につながるということですね。
加山
 そうです。そして当社が導入することで、我々もいろんなお客さまにグリーナでんきを紹介できる。先ほどの枝葉の話みたいに、そういう意味では仕事の幅がまた広がって、引き出しが一つ増えたなと感じています。実際に興味を持ってくれるお客さまも多いですし、それで、ゴミのほうにも関心を持ってくれる方が増えたらすごくいい相乗効果になると思いますね。
加山順一

自然エネルギーについてもチャレンジしたい
今まで、現在取り組んでいらっしゃることについてうかがってきましたが、これから興味のあること、未来への夢やヴィジョンなどはありますか。
加山
 やっぱり環境、エネルギー、廃棄物処理……いろいろありますけど、この木をもっと太くして、枝葉をどんどん広げていく事業はずっとやり続けたいなと思っています。
 私は、10年ぐらい前からデンマークに訪問し、現地の自然エネルギーの利用の仕方や、システムをずっと勉強してきました。北欧の自然エネルギーの利用方法について、皆さんに還元していきたいと思っています。
それは、具体的にはどういうことですか。
加山
 デンマークには原子力発電がないので、自然エネルギーに頼る部分が大きいです。風車を建てるだけなのですが、環境にいい電力を導入することによって、みんなが喜ぶ。最初に投資した人たちもメリットがあるから、次々に風車がたっていく。自然エネルギーに関わることで、当社にできることがあったらどんどんチャレンジをし続けたいなと思っています。 もちろん、そういう意味では枝葉だけではなく、本業である廃棄物処理についても、今やれてないものも許可を取得し、いろんなものが取り扱えるようにしていきたいですね。
 画期的な技術とか画期的なサービスっていうのはいきなり、今日の明日には生まれないのかもしれない。だけど、常に考え続けていけば多分どこかで見えるタイミングがあると思っています。
ゴミ処理先進国としての日本
加山
 日本の環境技術はやはり東南アジアとか発展途上の国から見ると、レベルがとても高いです。
 発展途上国の廃棄物処理というのは分別することなく集めて、単純に埋め立てに持って行ってしまいます。医療廃棄物もそのまんま持って行くこともあります。
地球環境全体で考えると、日本だけちゃんとできていてもしょうがない。だから、適正に処理できてない国に対して、日本の高い技術を広めていきたい。今、JICAの案件化調査で、ラオス国での医療廃棄物の適正処理に向けた調査を担当させていただいています。それも踏まえて、適正に処理できていない国々はまだたくさんあるので、積極的にこちらから出て行って、地球環境保全をやっていきたいなと思っています。
なるほど。やっぱり日本の廃棄物処理技術はすごく進んでいるのですか。
加山
 日本は進んでいます。我々はこれがスタンダードだと思っているけど、できてない国は全くできてないです。正しい管理や処分のノウハウをちゃんと教えて、本当に現地の人が困らないような仕組みづくりをする。そんな立場になっていければなと思っています。
「知る」ことでネガティブなイメージがなくなる
さっき、廃棄物っていうと一般的にあまりイメージが良くないみたいなことをおっしゃいましたけど、イメージが良くないというよりは、一般の人にとっては接点がないように思われていて、よく知られていないということが問題なのではないでしょうか。
加山
 そうですね。接点がないので実態を知らないだけだと思います。
 当社でも年に1回は町内の方達をお呼びしてイベントを開催しておりますが、お孫さんを連れて来て下さる方もいます。そうすると、小さい時から、なんでリサイクルが必要なのか正しい理解が深まります。
 トイレで水を流した後、どうなるのかみんな知らない。でも誰かがちゃんとどこかで処理してくれているからきれいになって、世の中が回っている。家庭の燃えるゴミや資源物もそう。分別して出したゴミはその後どうなっているのか。正しく知ることによって、ネガティブなイメージはなくなると思っています。
本当にその通りですね。 ところで、コーヒー豆も取り扱っていらっしゃいますが、これはなぜ…
加山
 ええ。「コピルワック」ってご存知ですか?インドネシアのジャコウネコのおなかでブルーマウンテンの豆が発酵し、その糞から採れるコーヒー豆(注:独特の複雑を持つ、非常に希少で高価なコーヒー)です。排泄物ということで、これも究極のリサイクル、出口戦略のひとつですが…。
 それは冗談として、もちろん、職人さん達の手により綺麗に精製しておいしいコーヒーとなります。糞だけに飲むと宝くじなどに当たったなどラッキーな説もお聞きします。
 こちらは養殖ではなく、天然の豆を使用しており、しかもフェアトレードの商品です。売上は現地の農家や孤児院などに寄付されます。
「コピルワック」

なるほど!面白いですね。
今日は、廃棄物についての興味深いお話をありがとうございました。

取材日:2017年5月某日
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加山興業
●加山興業株式会社プロフィール
愛知県豊川市を中心に、東海地区で産業廃棄物処理業を手がける。大手電機メーカーや自動車メーカーの産業廃棄物処理から、各種リサイクル、再生エネルギー事業まで、業務内容は多岐に渡る。
また、「加山ミツバチプロジェクト」から採集されたハチミツや防災グッズ、ジャコウネココーヒーなどを販売するサイト「エコロクル」も運営。
http://www.kayama-k.co.jp