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GREENa LAB

「自然エネルギー」をめぐる、ヒト・モノ・コトの実験室

平田はる香氏と店舗入口

2021.11.24 公開

問い掛けることに意義がある。
株式会社わざわざ
代表取締役 平田はる香氏インタビュー(1/3)

長野県東御市御牧原の山の上にあるパンと日用品のお店「わざわざ」。店名には、こんな山の上までわざわざ来てくださってありがとうございますという感謝の気持ちが込められている。人々の健康を考え、こだわり抜いたパンの移動販売から始まった事業は2021年に年商3億円規模へ拡大。現在「わざわざ」と「問(tou)」という2つの実店舗とECを運営。タオルや食器など日用品の販売においても、長く使えることやゴミが出ないこと等、独自の選定基準でサステナブルな企業運営を実践しています。「パン屋さん」を超越して、サステナビリティを追求している株式会社わざわざの代表・平田はる香さんにインタビューに伺いました。
次の世代の人たちに受け渡しができない、という感覚
株式会社わざわざのVisionは「人々が健康である社会へ」ということで身体にやさしいパンや日用品を扱っていらっしゃいますが、その中で環境問題も同時に考えようと思ったのはどういった理由・経緯からでしょうか?
平田
創業当初から環境に配慮するということは考えながら事業を行っていたので、大前提でした。私が創業したのは2009年なのですが、その時は環境意識の高い人は特殊な人間だったんですよ。震災をきっかけに大きく変わっていったと思うのですけど2009年より前だと本当にごく一部のマニアックなユーザーが健康志向で、環境のこと・地球温暖化のことを考えて電気を大切にしようという人は少なかったと思います。

ただ、長期的に考えた場合にはその視点は必要だろうということを創業した当時から思っていて、同じように心身ともに健康であるということも、地球が健康であるということには必須だと思っていました。今の時代のテクノロジーの恩恵も受けつつも、自然の恩恵も受け両立している状況ができるだけ長く続いていた方がいいと考えていました。
わざわざ店舗外観

自然な環境にといっても今のテクノロジーがなくなった状況も想像しがたいですし、江戸時代に戻った生活にしろと言われてもできないですよね。この便利な社会に慣れてしまっているので。なので、できるだけそれを意識しつつ、地球の上を一時的に借りて住まわせてもらっているという意識でいないといけないな、とは思っていて。

実際に、たった1人でそれを生活のなかで取り入れていても全体はそうならないので、お店をやる中でそういった意識を表していって、1人でもだんだん仲間が増えればいいなという感覚だったと思います。
地球の上を借りている、という考え方は確かにその通りですね。創業前にも環境のことを考えることはありましたか?
平田
長野に引っ越してきてからの方が環境への意識は高くなったと思います。東京に住んでいた時からそういう環境意識の高い友人はいて、話をする機会はありました。気を付けるべきだという認識は頭の中で存在はしていたのですけど、電気を節約するとか水を大切に使うとか自分の行動の範囲の中でしか考えていませんでした。当時は、社会とか周りに広げようとは思っていなかったですね。

でも長野に来て自然環境がすごく良い場所で過ごしていると、心からこれが持続すればいいなと思うようになりました。ちゃんと田畑が耕されていて人間の手が入っているからこそ、この環境が保たれているのだなということを改めてすごくよく感じます。周りの人たちが管理してくれているからこの恩恵を享受できているんだなということを感じて、自分たちもそれを考えながら生活していかないと次の世代の人たちに受け渡しができないという感覚に徐々になっていったというのが経緯だと思います。
パンや食品の陳列棚

わざわざで買い物をするとゴミが殆ど出ない
そういった背景やお考えの中で、独自基準を作って日用品を扱っていらっしゃるかと思いますが、HPに書かれている「わざわざで買い物をするとゴミが殆ど出ない」という言葉が印象的でした。これは具体的にどのようなことをイメージしているのでしょうか?
平田
ゴミが完全に出ないということは無理ですよね。よって実質的にゼロにするということになるのですが、買い物をする上でゴミを出さないための選択肢を持つとしたら実店舗で量り売りというケース以外はゴミが出ます。必ず何らか梱包されていますし、それを裸のまま渡すというのはインターネット通販の世界では無理です。

よって、わざわざではもともとリサイクルされる予定になっている資材や、リサイクルしやすい素材といったような基準で梱包材を選んでいるというのが大きな方針だと思います。
店舗から見下ろした東御市の風景

例えば現在の取り組みの1つとしてはECの買い物をしてくれたユーザーがふたを開けてくれたときにゴミの分別が殆ど必要ない梱包材を使っています。プラに分けたり、金属に分けなくても一括で燃えるゴミとして出せるような緩衝材を使用しているのですね。だからプラスチックの梱包材をできるだけ使わずに、当社がパッキングする材料は原則的に紙として捨てやすい状態にしています。

具体的に言うと、うちの倉庫から出荷するものは主にパンなどですが、それは地元の方の寄付による新聞紙を中心に使われています。また八王子の倉庫からの出荷も8割くらいになるので、そちらは再生紙などできるだけ紙系の梱包材を使用して工夫をしています。できるだけリユースできる緩衝材を使っています。
リサイクル残糸ソックス

あとは別のパターンでもともとゴミにする予定だったものを再利用するという取り組みも行っています。例えばプレゼント用のラッピング資材は必ずゴミになりますよね。私たちのラッピング材は藤原印刷さんという会社の協力を得て、廃棄される予定の紙「残紙(ざんし)」にプリントしてもらっています。その際のインクも廃棄予定だったインクを使っています。印刷工場では一日の終わりに必ずインクを空にするという工程があり、そのタイミングでうちのロゴをプリントしてもらっています。
ロゴがプリントされたラッピング資材

だんだん擦れていって色が薄くなってくるのですけど、それが様々な色の種類になっていく。インクが枯れていく過程で色が変わっていく。残ったインクで作られたラッピング材を使っています。あとは残った糸、残った布など工場の廃棄される予定だった材料を使って新しいプロダクトを作っています。完全にゴミが出ないという訳ではないですけれど、実質的にゴミになる予定だったものを使用して、できるだけ廃棄物が出ないような仕組みを作っています。