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GREENa LAB

「自然エネルギー」をめぐる、ヒト・モノ・コトの実験室

平田はる香氏と店舗入口

2021.11.24 公開

問い掛けることに意義がある。
株式会社わざわざ
代表取締役 平田はる香氏インタビュー(2/3)

問の店舗外観と夕暮れ

そうなのですね。それに加え「ものづくりの基準」の中で“NO PLASTIC”を掲げていてECという事業形態からすると難易度が高い挑戦なのではと感じます。あえてそれを掲げるのはどういった理由からでしょうか?
平田
ノープラスチックはそこまで難しいと思っていません。先ほどの通り、自社の梱包材を殆どノープラスチックにできているので。ただ例えばマヨネーズのパックなどを紙に変えるのは不可能かもしれません。なので選択肢として瓶に入ったマヨネーズを2種類は置いてあります。確かに自社が介在しない小売商品については生産者側の選択なのでそこには介入できないですが、自社に関しては、自社のオリジナル商品をプラスチックの包装をしなければいいだけだと思っています。
実際に、東屋さんという取引先の商品は全てノープラスチックです。だから選択として自分たちがやるということだけならできなくはないと思っています。ただ販売する商品のサプライヤー側までは管理できないのでそこだけは難しいと思っていますが。
選択の中でカバーできる範囲で、ノープラスチックをやれるという手ごたえがあるのですね。
平田
徐々に減らして現在8割くらいまで進んできました。できていないのはタグのピストルとか。細かい所でまだやれていないところはありますが、その辺ですかね。
単一なエネルギーに頼ることのリスク
そんな中で、今回グリーナでんきに電力の切り替えを行っていただきましたが、そもそもエネルギー問題に関心を向けた経緯はどんなものだったのでしょうか?
平田
最初にエネルギー問題に関心を向けたのは震災のときで、2011年の震災のときです。うちはパンを「ガス窯」で焼いているのですが、それだと単一なエネルギーに頼ってしまってガスが途絶えた時、例えば災害時に焼けない、営業できないという選択しかなくなってしまうことを想像しました。

この経験から両輪で回すということをやりたくなって。「薪窯(まきがま)」という選択肢を持っていれば、たとえガスが止まっても独立できる。他社から供給を受けていなくて自立できているエネルギー源になります。それでまず薪窯というのを取り入れたというのが最初にエネルギー問題に関心を向けたきっかけでした。
薪窯で焼いたパン

あとは「風で織るタオル」などを製造しているイケウチオーガニックに出会って。工場なども見学し池内さんとお話させていただいたのですが、電気のエネルギーをまず風力に変えたという話を聞いて、証書も見せていただいて、こういう風に企業で取り入れられるのだなということが分かりました。実際にやっている人に初めて出会ったケースだったのです。企業として工場の電力等を全て再エネにしている方のお話を直接聞くことができたので、「あ、やれそうだ」という感じになりました。

ただすぐに切り替えるという方向にはならなかった。他に色々事業を続ける中でそこの切り替えが今すぐ早急に必要だという決断にはならなくて。今後やりたい、といったような実感のない状態が続いていました。

ただ今回切り替える決断に至ったのは、コロナ等で色々な問題が起きていく中で、アメリカの企業認証の制度である「B Corp」の取得にトライしていくことになったのがきっかけでした。B Corpの質問項目にエネルギーに関する項目が多数含まれていて、「今だな」ということを感じました。
サステナブルな経営を実践するためのB Corp認証
B Corpは国内でも前例がない中で新しい挑戦的・野心的な取り組みだと感じたのですが、B Corp認証はどういった仕組みになるのでしょうか?
平田
B Corpの認証は、今世界で約4200社登録されていて、アメリカの企業が約1/3を占めています(2021年11月時点)。日本だとまだ6-7社しか取得企業がありません。なぜ共感したかというと、株主に重きを置かない資本の構造を目的としているというところがすごくいいなという風に思って。“誰を見て事業しているのか?”というところです。利益追求が今までの会社の形態ということになっていると思いますが、B Corpの価値基準というのは環境負荷を掛けないとか、多様な思想を認めるといった点にあります。これまで良い企業というのは売り上げを上げてたくさん製品を作っていて、たくさん人を雇っていて、という成長していく会社だったと思いますが、B Corpの良い会社の定義がそうではないという点に感動して、それでやろうということになりました。
店舗内の本と草木

認証のシステムとしては、「アセスメント」というものがあって200点満点の質問項目に答えていきます。80点以上取得できると合格という形です。その後、面談をして実際それを実施できているか等、様々なフローがあって、認証を取れるというシステムです。ただ、各質問のハードルがすごく高いのです。

例えば年間でゴミの排出量がどれくらいで、炭素に換算するとどれくらいなのか。また自社の炭素排出量の試算もあります。例えば灯油でエネルギーを選択していると当然、排出量が多くなるのですが、そういうものを全て管理していかなくてはいけなくなります。また多様性を重視した採用をしているか、社内に格差はないか、障害のある方を優先的に雇っているかなど多様性を重視したアプローチをしているかどうかも問われます。あとはガバナンスで、会社の法規についてどういった取り決めをしているかなど本当に広い範囲の質問が並んでいます。

特に環境の部分は厳しい質問が多くて、いま当社は69点くらいです。始めたばかりのときは、半分くらいだったのですが、今回はその一環で電気を切り替えました。当社の全部の電気が普通の電力だったので、そこを自然エネルギーにするとアセスメントの点数が高得点になります。
ただ店舗の1つである「問(Tou)」の施設自体は市が所有する施設で、そこがハードルになっています。この店舗の電力が当社の使用電力量全体の50%程度を占めているのです。それなので市役所へプレゼンに行って話をして、今検討していただいている状況です。理解していただいて、市でも切り替えるという話になれば当社の電力を100%切り替えることができるといった状況です。