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GREENa LAB

「自然エネルギー」をめぐる、ヒト・モノ・コトの実験室

飯田哲也

2017.4.27 公開

「100%自然エネルギー」の未来は、100%やってくる。
エネルギー学者 飯田哲也氏インタビュー(2/3)

3.11以降の日本のエネルギー問題、そして、自然エネルギーの未来とは?
最近では全国の「ご当地電力」支援に尽力する飯田氏に、エネルギーと電力について、正直なところを語ってもらいました。
3.11は日本人の常識を変えた
東日本大震災での福島第一原発事故をきっかけに、多くの人が自然エネルギーに関心を持つようになりました。
だけど、現在は悪い言い方をするとブームが去ったというか…
飯田
 そうですね。
一時期よりも、エネルギー問題に対する人々の関心が低下してきているような感じがしますが。
飯田
 そうですね。確かにそういう一面はあります。
 でも、一方で完全に日本人の中に、ある「新しい常識」ができたことも確かだと思います。いろんな価値観が大きく変化しましたよね。例えば昔みんな原発についてあまり理解していなかったけれど、今はベクレルとかシーベルトとか、それなりに知ってたりする。どこまで正しく理解してるかは置いといたとしても、ほとんどの人はそれなりに理解してる。こんな国民ないと思うんですよ。世界中探しても。
そうですよね。原発やエネルギーに対する知識が深まった。
飯田
 今確かにブームの反動で冷えてるというか、もう飽きているような感じですけど、その代わり、知識レベルっていうのは非常に高い。恐らく他のどこの国よりも高いと思いますね。そこがまずベースにあります。
そういう状況で、今現在、日本における自然エネルギーってどうなんでしょう。
3.11以後に生まれた市民主導の電力など、着実に根を張ってきているんでしょうか?飯田氏は全国の「ご当地電力」をサポートされていますが、そのあたりのお話を聞かせてください。
飯田
日本のご当地電力って大体200くらいあるんですが…
200もあるんですか!?
飯田
 本当におもちゃみたいな小さな取り組みから、割と数百億円を投資してる所まで、いろいろあるんですけど、実際にチャレンジし始める所が本当に多いんです。
 デモとか声を上げることが、結局この国ではあまり役に立たないんだなという、ある種の疲れ感はあるものの、一方で小さなことでも、実際に自分たちでやっていけることへの関心は、逆にどんどん高くなると私は見てるんです。
飯田哲也

声を上げるだけじゃなくて、自分たちでやってみるということですね。
飯田
 これは実は政治全般に関しても言えることですけどね。投票したって変わらないよな〜っていう気分があって、アメリカも投票率が5割ちょいぐらいしかないし、日本も衆議院、参議院はその程度で、県知事選とかになったらもっと低い。
 でも、政策に直接賛否を投じる、いわゆる住民投票とかになると、一気に投票率が上がるんですよね。これはどこの国でも出てくる現象で、直接自分たちが結果に関与できるものに対しての関心度っていうのは非常に高く、間接的なものに対しては関心がどんどん下がっていく。そういう現象なんですね。
電力を、みんなの手でつくっていく
飯田
電力を作るって、ビジネスでやってる人はかなり多いんですけど。その一方で、そうじゃない人もいる。
お金を儲けようという動機じゃなくて電力をつくる。
飯田
 これまで電気っていうのはスイッチをひねるだけでいいと思ってたけど、それがあんな原発事故のようなことがあると、逆に自分たち自身が関わって作っていこうと思う。
 それは政治というチャネルを通じずに、社会自身を自分たちが変えていくということと同じですよね。いわゆる間接民主主義と、先ほどの住民投票は直接民主主義、あるいは参加型民主主義なんですけど、もう一歩さらに進めて、アソシエイティブ・デモクラシー、実践型民主主義って言うんです。
「実践型」民主主義。
飯田
 そういう要素もあるんですよね。だから、われわれ日本各地で市民電力の立ち上げのサポートをしてますけど、いきなり会社をつくって、誰か社長になって、お金引っ張ってきて、体力付けましょうじゃなくて、まずは参加の場をつくるんです。
みんなが参加することが大事なんですね。
飯田
 できるだけいろんな人が集まってきて、それをずっと繰り返していく。そうすることで、もちろん一応テーマは地域で、みんなでエネルギーを作っていくことなんですけど、話し合いを通じて、じゃあ、どんな地域をつくっていくんだっていうビジョンを共有して。共有というか、ビジョンそのものを自分たちで作っていくんです。ワークショップとかをしながら。
 同時にそのビジョンに沿った形で、太陽光なり、風力なり、バイオマスなり、事業としても形にしていかないといけないんですけど、それもプロが勝手にやっちゃったり、あるいはどこかに委託するんじゃなくて、一番専門的なところは外部に頼むにせよ、できるだけ自分たちの中で勉強したり、一生懸命キャッシュフローを組んでみたりとかやっていくわけですね。
 そういうプロセスを経ていくことで、だんだんある種のネットワークとコミュニティが出来上がっていって、進んでいくんです。
なるほど。ひとつひとつプロセスを経ながらみんなでつくっていくんです ね。
飯田
 それ自身が新しい地域の中の失われたコミュニティというか、関係性づくりになっていって、そこが非常に重要なんです。
 恐らくこれはまちづくりとか、農業とか、いろんな分野で。
自然エネルギーは、地域を再生する
コミュニティ再生の鍵を握るのが自然エネルギーだと。
飯田
 そうですね。なぜそれが自然エネルギーなのかっていうと、多分グローバルかつ構造的かつ歴史的な変化とすごくシンクロしているからだと思うんですよね。
 地域でカフェをやるとか、農業をやるとか、それはそれでお金も回るし人も動くんだけれども、でも、はっきりいって成功するかどうか分からない。だけど、自然エネルギーは違うんです。
 今、エネルギーって地域のGDPの5%ぐらいを使っていて、そのお金は失われるばかりだったけれど、自然エネルギーをつくるとなるとそのお金を閉じ込めておけるというか。かつ、固定価格買取制度にきちんと乗っかれば人を雇用できるだけの事業にできる。ちゃんと人が雇用できれば、ちゃんとそのことを真剣に考える人とチームができていくので、すごく持続的に、しかも発展的に動いていけるんですよね。
理に叶った話なんですね。
飯田
 エネルギーを軸にするっていうのは、地域づくりの中でも一番核になる。その周辺の農業をやろうとか、カフェをやろうとか、町並みを変えるためのいろいろな話し合いをしようとか、そういう周辺のことが、それぞれが本当に大事なテーマなんだけれども、エネルギーを軸に全部一緒にやっていけるんです。
 エネルギーそのものが、今、世界史的に/グローバル的に、大規模集中独占型から地域分散ネットワーク型への構造変化の真っただ中なので、そこにもすごくシンクロしているんです。
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